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柄の入り方や形によって、着物はいくつかの種類に分けられます。中でも準礼装である訪問着と付け下げは、よく似ています。ただし、両者にはさまざまな違いがあるため、事前に違いを把握しておきましょう。
この記事ではさまざまなポイントから、訪問着と付け下げの違いについて詳しくご紹介します。それぞれの特徴や簡単な見分け方、着用シーンに合わせたおすすめの小物の組み合わせ方などもご紹介するため、ぜひ参考にしてください。
訪問着と付け下げはどのような着物?
着物にはさまざまな種類があり、それぞれで格も異なります。着物を着用する際は、着用シーンと格を合わせることが大切です。ここでは訪問着と付け下げの特徴や、主な着用シーンなどをご紹介します。
訪問着は準礼装の着物
訪問着は着物の格でいうと、準礼装にあたります。黒留袖や色留袖の次に格が高いとされており、友人・知人として出席する結婚式といったフォーマルな場から、ややフォーマルな食事会などで着用可能です。
訪問着は、肩や胸あたりに柄が入っているということが特徴として挙げられます。裾には留袖と同じように「絵羽模様」と呼ばれる、一枚の絵のようにつながった柄があしらわれています。なお訪問着は、既婚・未婚問わず着用可能な着物です。
付け下げは訪問着の豪華さを抑えた着物
付け下げは、訪問着の次に格が高いとされている準礼装です。戦時中に華やかな雰囲気がある訪問着が贅沢品として禁じられてしまったため、豪華さを抑えた付け下げが訪問着の代わりとして生み出されたとされています。
付け下げは肩や胸、裾に模様が入っているものの、全体的に控えめな印象を与える着物です。また反物の状態で模様付けすることから、訪問着のようなつながり模様はありません。
訪問着と付け下げの主な違い
ここでは訪問着と付け下げの5つの違いを詳しくご紹介します。
1:格の違い
礼装は格の高さによって「正礼装」「準礼装」「略礼装」の3つに分けられます。訪問着と付け下げは、両者とも準礼装です。ただし、準礼装の中でも着物の種類によって格の違いがあります。準礼装の中で最も格が高い訪問着に対して、付け下げはおしゃれ着に近い着物として扱われます。
友人・知人として出席する結婚式やフォーマルな式典などには、より格が高い訪問着を着るとよいでしょう。付け下げはカジュアルすぎるため、適していません。
一方で、合わせる帯によっては、付け下げをセミフォーマルな場で着ることも可能です。帯との組み合わせを変えることで、着用シーンが広がります。ただし、あくまでもおしゃれ着としての着用がメインであるため、訪問着のようには着られない場面もあることを理解しておきましょう。
2:価格帯の違い
訪問着と付け下げは、価格帯も異なります。格の高い訪問着の方が、値段が高い傾向にあることを覚えておきましょう。
価格に差が出るポイントの一つとして格の違いの他に、訪問着の方が仕立ての手間がかかることが挙げられます。訪問着では絵羽模様を付けるために、反物から着物の形に仮仕立てを行ってから模様を描きます。
一方で、付け下げは反物の状態のまま模様付けが行われます。訪問着と違い仮仕立ての手間がない分、価格が抑えられているといえるでしょう。
3:見た目・柄の違い
訪問着と付け下げを見分ける方法の一つが、どういった形で販売されているかを見ることです。呉服店に行った際、反物のまま置かれている着物は付け下げです。一方で、着物の形で掛けられている物は訪問着と判断できます。
また訪問着と付け下げを柄で見分ける方法もあります。縫い目に関係なく、左右の身頃から肩や袖まで一枚の絵のようにつながった柄(絵羽模様)があれば訪問着です。付け下げに関しては、裾だけでなく肩や胸にも柄が入っている点が訪問着と似ていますが、縫い目で柄が途切れていたり、ところどころに細かなパターン装飾が施されたりしています。
4:組み合わせる小物の違い
訪問着と付け下げは、組み合わせる小物にも違いがあることを押さえておきましょう。訪問着は色留袖と同様、袋帯を合わせるのが原則です。
一方で、付け下げは袋帯に加えて、名古屋帯を使うことも可能です。どの帯を使うかによって、格調や印象を調整できます。フォーマルに近い場では袋帯、食事会などのようにカジュアルな場面では名古屋帯を合わせるのがおすすめです。
小物によって着物の印象は大きく変わります。着用シーンに合わせて帯や小物を変えることで、自分なりのおしゃれを楽しみましょう。
5:着用シーンの違い
訪問着は、結婚式やパーティーなどのお祝い事に適した着物です。慶事の際には格の高い帯を選び、よりフォーマルに仕上げるのが通例です。準礼装の中でも格が高い着物とされている訪問着であれば、フォーマルなシーンでも着用できます。
なお訪問着をお茶会で着ることも可能です。ただし、華やかすぎるデザインは浮いてしまうため、シンプルな物を選ぶようにしましょう。
付け下げは、お食事会や観劇、カジュアルなパーティーに向いています。入学式や卒業式のように自身が主役ではない場面では、豪華さがある訪問着では目立ちすぎてしまうかもしれません。そういった場ではよりシンプルな柄が多く、控えめな印象を与えられる付け下げがおすすめです。
初めての着物には付け下げがおすすめ!その理由とは?
さまざまな種類の着物のうち、初めて着物を着る人には付け下げがおすすめです。初心者に付け下げをおすすめする理由は5つあります。以下で詳しくご紹介します。
色無地や訪問着の代用として使える
前述したように、着物は種類によって格の違いがあり、着用できるシーンが異なります。一方で、さまざまな種類の着物をそろえるのは簡単なことではありません。
全ての種類そろえるとなると、まとまった金額が必要になるでしょう。そのため、初めての人には色無地や訪問着の代用として使える付け下げがおすすめです。付け下げは、色無地や訪問着の代わりとして幅広いシーンで着られる着物です。また柄や合わせる小物によって、訪問着に近いような形でも着用できます。
なお色無地とは、一色染めで地紋以外の柄が入っていない着物のことです。家紋入り(紋付き)は略礼装として着用可能 であるのに対して、家紋なしはカジュアルに着られます。幅広いシーンで活躍する着物です。
準礼装である付け下げは、色無地よりは格が高い着物ですが、柄が小さい物は色無地と同様に控えめな印象を与えます。そのため、色無地のようにカジュアルなお出かけで着用しても違和感がありません。
帯によって格を変化させられる
付け下げは、着物自体がシンプルかつ軽い印象のため、合わせる帯次第で格を調節できます。特に帯の選び方にこだわれば、付け下げ一枚でさまざまな場面に対応可能です。
原則としてフォーマルな場面では袋帯、カジュアルなパーティーやお出かけでは名古屋帯を選ぶということを覚えておきましょう。また金銀糸の袋帯を選べば、よりフォーマルな印象を与えられます。観劇時に着用する際は、洒落袋帯を選ぶのもおすすめです。
コストパフォーマンスがよい
付け下げは製造の工程が簡略化されていることから、訪問着に比べて値段がリーズナブルな傾向にある点が特徴です。なお付け下げの中には、訪問着との見分けがつかないほど豪華なデザインの物もあります。
一着でさまざまな場面に使えることや、訪問着のような豪華さを与えられることなどから、付け下げは着物の中でもコストパフォーマンスが優れている着物といえるでしょう。
帯や小物とのコーディネートが楽しめる
訪問着よりも柄が控えめでシンプルな物が多いという付け下げの特徴を活かして、帯や帯締め、帯揚げなどとのコーディネートを楽しむこともできます。帯で季節感を取り入れたり、個性的な小物を使ったりと、TPOや個性に合わせてコーディネートに変化をつけてみましょう。
なお同じ付け下げでも、合わせる小物によって異なる印象を与えられます。着物のおしゃれを楽しみたい人や自分の個性を表現したい人にも、付け下げはおすすめです。
年齢を問わないため長く着られる
付け下げは年齢を問わずに長く着られることも、おすすめできるポイントの一つです。シンプルで控えめな柄のため、着る人を選びません。また柄の中でも特に古典柄と呼ばれる模様は流行り廃りがないことから、長く着用できる柄とされています。
さらに付け下げは、既婚でも未婚でも着られる着物です。着物の中には振袖のように、結婚したら着られなくなる物もあります。ライフスタイルが変化しても着用し続けられるのは、付け下げの特徴といえるでしょう。
付け下げはシンプルな分、コーディネートで変化をつけられる着物です。若い頃は派手な帯を使い、歳を重ねてからは粋なデザインを取り入れるなど、年齢の変化に応じてコーディネートを工夫するのもおすすめです。
まとめ
訪問着と付け下げは、両者とも準礼装に区分される着物です。ただし、格や価格帯、柄などに違いがあります。特に着用シーンの違いには注意が必要です。
訪問着は準礼装の中で最も格が高い着物のため、友人・知人の結婚式やフォーマルな場で着用できます。対して、付け下げは訪問着よりも控えめな印象を与える着物です。カジュアルな印象を与えることから、フォーマルな場での着用には適していません。ただし、帯の種類を変更することで格を調整できるという点は覚えておきましょう。
なお訪問着などの着物を所有しているが、ずっと保管し続けたままにしているという人は、ぜひ着物買取専門店である「おお蔵」の買取サービスをご利用ください。状態の悪い着物でも買取対象です。相談料・査定料は無料のため、お気軽にご相談ください。
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