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牛首紬とは石川県で作られている紬の一種です。美しい光沢を持ち、かつ着心地がよい絹織物として着物好きの人の間ではよく知られています。また通気性がよく、丈夫で長持ちすることも人気の理由の一つです。
この記事では牛首紬の概要や歴史、特徴などを詳しくご紹介します。また独特の風合いを生み出すために今も守られている伝統的な製法についても解説します。牛首紬に興味がある人はぜひご覧ください。
牛首紬の概要や歴史
牛首紬は大島紬や結城紬ほどの知名度はないものの、通の間では有名です。ここでは牛首紬の概要と歴史をご紹介します。
牛首紬の概要
牛首紬とは石川県白山市で作られている織物のことです。特殊な玉繭を使い、昔ながらの製法で手作りされている牛首紬は、非常に丈夫なことでも知られています。
玉繭とは2匹の蚕が一緒に作り出した繭のことです。玉繭は糸の品質が安定しないことから「くず繭」とも呼ばれており、一般的な着物には使用されません。牛首紬ではこの玉繭を原料として作られています。また全生産工程を一貫作業で行っている点も、牛首紬の特徴の一つといえるでしょう。
牛首紬の歴史とは
牛首紬の歴史は、1159年に起こった平治の乱で敗れた源氏の落人が、石川県白山市の旧牛首村に流れ着いたことから始まったといわれています。落人の妻から機織りを習った村人を通じて広がった牛首紬は、やがて豪雪地帯の山村の貴重な収入源になりました。
かつて山村では、収入を得る手段として養蚕が一般的に行われていました。細くて長い絹糸が取れる繭は出荷し、出荷できないくず繭(玉繭)を自家用の着物を作るために利用していたとされています。
なお太平洋戦争の際に旧牛首村の養蚕業が打撃を受けたことにより、牛首紬は一時生産されなくなってしまったことも歴史の一つです。戦後に多くの困難を経て復活し、現在も生産が続けられていることを覚えておきましょう。
牛首紬にはどういった特徴がある?
玉繭を使い昔ながらの製法で作られる牛首紬には、独特の特徴があります。ここでは牛首紬の主な特徴を4つご紹介します。
玉繭が作り出す光沢
牛首紬は、玉繭から紡いだ糸である玉糸を使って作られます。玉繭は1つの繭から2本の糸が取れることから絡み合ってしまうため、普通の繭より糸を引き出すのが難しいです。また普通の繭から引き出す糸よりも短いことから、玉糸は使いにくいとされています。
なお玉糸で織られた生地は糸が節のようになっており、普通の繭の糸よりも光沢がある点が特徴です。玉繭ならではの美しい光沢を楽しめるでしょう。
手作りならではの快適な着心地
手作りならではの快適な着心地も、牛首紬の特徴の一つです。伝統的な座繰り製法によって紡がれた糸は、弾力性ならびに伸縮性が優れています。また牛首紬独自の工程である糸はたきを行い、糸に空気を含ませることでしなやかさも出しています。
生糸のよさを引き出し、ふんわりと柔らかな着心地を実現するために欠かせない工程です。さらに手作業で丁寧に作られた牛首紬は、通気性・保温性にも優れています。
なお同じ石川県白山市で作られている「白山紬」についても覚えておくとよいでしょう。牛首紬が手織りで作られているのに対して、白山紬は機械織りで作られています。また白山紬は生地が薄く、やや硬い手触りの物が多い傾向にある点も違いの一つです。
「釘抜き紬」といわれるほどの丈夫さ
牛首紬は、丈夫さでも知られています。釘に引っかかっても紬は傷まず、反対に釘の方が抜けると例えられるほどです。こういった例えをされることから、牛首紬は「釘抜き紬」とも呼ばれます。生地が強い理由としては、糸が2本より合わさっている玉糸を使っていることが挙げられます。
希少価値が高い
石川県の無形文化財に指定されている牛首紬は、大島紬や結城紬と並ぶ日本三大紬の一つです。生産する工房の数が少なく希少価値が高いことから、中古品でも高額で取引されています。
牛首紬と認められるためには「玉糸を使用すること」といったいくつかの条件を満たしておく必要があります。公式に認められた牛首紬かどうかは、着物に付属している証紙で確認可能です。牛首紬の中でも状態がよい物や品質が高い物などに関しては、特に価値が高いといえるでしょう。
なお大島紬・結城紬は不動の地位を確立しているのに対して、牛首紬は不動の地位を確立しているとまではいえません。このことから、三大紬の最後の一つを上田紬や塩沢紬とする説もあります。
さまざまな特徴がある牛首紬はどういった工程で作られるのか
では、牛首紬は具体的にどういった工程を経て作られているのでしょうか。ここからは牛首紬の主な製造工程をご紹介します。牛首紬が多くの手作業を経て丁寧に作られていることが分かるでしょう。
1:選繭・煮繭
選繭は、良質な繭を選別する工程のことです。一般的な繭からわずかな量しか取れない玉繭の中から、経験豊富な職人が座繰り製法に適した物だけを選び出していきます。選び出された玉繭を糸がほぐれやすくなるよう煮る工程のことを煮繭と呼びます。
2:製糸
製糸とは繭から糸を引き出し、1本の生糸にする工程のことです。牛首紬の場合は座繰り製糸機を使い、伝統的なのべ引きという方法で玉繭から糸を引き出します。玉繭から引き出される糸は、2本が絡み合っていることに加えて短い物が多いため、糸の太さをそろえるには熟練した技術が必要です。
3:精練
できあがった糸に撚りをかけると、次は精練の工程です。精練とは繭を作るときに接着剤の役割を果たす「セリシン」というたんぱく質を煮沸して除去する工程のことです。
なお精練で使われる水の質は、できあがりに大きく影響するといわれています。牛首紬に関しては、白山山系の伏流水が使用されている点が特徴です。この水により絹の光沢や柔らかな感触が生み出されているといわれています。
4:染色
先染めをする場合は、織る前の段階で染色します。紬は先染めが一般的ですが、牛首紬では織り上がった物を染める後染めが行われることも多いです。
また牛首紬に関しては、伝統的に植物染料による草木染めを行っています。ただし、近年は色抜けを防ぐために化学染料も使用されています。なお次の工程に進むためには、染め終わった糸を半年ほど放置し、色をしっかりと定着させることが必要です。
5:製織
製織の工程に関して、牛首紬では高機(たかはた)という織り機を使用します。高機とは古墳時代に中国から伝わったといわれる、長い歴史を持つ木製の織り機のことです。腰板に腰かけ、足で踏むことで操作します。
両手両足を使うこと、かつタイミングも重要なことから、高品質な織物を織るには高い技術が必要です。
まとめ
牛首紬とは日本三大紬の一つにも数えられる、美しい光沢や丈夫さなどが特徴の絹織物です。現在も伝統的な製法を用いて作られており、希少価値が高いとされています。
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