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グランサンクの始まり『ショーメ』
2022年04月14日

ブランドジュエリーが好きな人にとって、5大ジュエラーといえば聞き覚えのある方が多いはずである。それはカルティエブルガリティファニー、ヴァンクリーフ&アーペル、ハリー・ウィンストンを指す。抜群の知名度を誇るこれらのブランドを指すこの言葉は現代においてもよく浸透している言葉ではないだろうか?

ではグランサンクという言葉を聞いたことはあるだろうか?

今回はグランサンクについてとショーメの歴史についてお話ししたいと思う。

 

グランサンクとマリ=エティエンヌ・ニト


現代ではあまり使われなくなったこの「グランサンク」という言葉は、昔からブランドジュエリーが好きだったという方には懐かしい響きではないかと思う。

グランサンクとはパリのヴァンドーム広場とラペー通りに店舗を構える高級ジュエリーブランドのことを指す。

パリの5大宝飾という別名で呼ばれることも多いグランサンクは、ショーメ、ブシュロン、モーブッサン、メレリオ・ディ・メレー、ヴァンクリーフ&アーペルがそれに属している。かつては合同で新作の発表会を行っていたなどの歴史を有し、人々の憧れの的でもあった存在である。それぞれが長い歴史を有し多くの実績を積み重ねた超一流ジュエラーであるが、その中で一番初めにヴァンドーム広場に出店し、グランサンクの礎を築いた始まりのブランドは一体どのブランドであったのか?
それはショーメである。

ショーメの創業は1780年。世界5大ジュエラーと呼ばれる5大ブランドの中で最も歴史を有するティファニーの創業が1837年である。それに比べても50年以上長い歴史を有する。

創業者は宝石商のマリ=エティエンヌ・ニト。マリー・アントワネットのジュエラーであった師アンジュ・ジョセフ・オベールのもとで修業を積み、パリのサントノレ広場にブランドの前身となるブティックを構えたことから長きにわたるショーメの歴史は始まった。

師がマリー・アントワネットのジュエラーであったことなどから貴族の家にも出入りを多くしていた創業者のマリ=エティエンヌ・ニト。その中には後の皇后ジョゼフィーヌが生まれ育ったボワルネ家もあった。
またある日、まだ将校だった後の皇帝、若きナポレオン・ボナパルトが手綱を引く馬車が暴走の末に店の前で転倒。ナポレオンはそれを懸命に助け出し、店で手当てをしてもらったことに深い感謝をするとともにその作品の美しさに魅了されたという。手当てまでしてもらったことに感銘をうけたナポレオンは、いずれこの恩を必ず返すと約束したといわれている。こうしてニトは貴族との縁をより一層深めたのであった。

それから数年後、その約束は果たされることになる。

1802年にフランス皇帝を即位したナポレオン1世は戴冠式の際に用いる剣の制作をニトに依頼する。またニトを皇帝御用達ジュエラーに任命した。こうしてニトとその彼の息子は、ナポレオンの戴冠式に用いられた宝剣や宝冠など、帝政時代の権力と豪華さのシンボルとしてふさわしい、壮麗な宝飾品の数々を生み出していくことになるのだった。

ニトが制作するジュエリーは存在感の大きさや豪華さなどを有し、また皇室御用達に任命されたこともあってたちまち名声を集めていった。こうしてニトはヨーロッパで最も人気の高いジュエラーの一つとなっていったのだった。

 

時代と共に誕生する新しい『ショーメ』


こうして名声を集めながらその存在を大きくしていく創業者のマリ=エティエンヌ・ニト。1812年にはその息子であるフランソワ=ルニョーが彼の跡を継ぎ、パリのヴァンドーム広場にアトリエを構える。これが後々の世でグランサンクと呼ばれることになる最初の出店であった。

だがここでお気付きだろうか?

そう。創業者であるマリ=エティエンヌ・ニト。その息子であるフランソワ=ルニョー。
またニトの後継者として1815年から跡を継いだ職人でもあるジャン・バティスト・フォッサンを含めても『ショーメ』の名前は出てきていない。

ショーメの名前が出てくるのは1885年の事。ニトの創業から105年もの歳月を経過してからなのである。
その歴史を辿っていくと、①マリ=エティエンヌ・ニト⇒②その息子であるフランソワ=ルニョー⇒③ジャン・バティスト・フォッサン⇒④その息子であるジュール・フォッサン⇒⑤ヴァランタン・モレル⇒⑥ヴァランタン・モレルの娘マリーと結婚したジョセフ・ショーメと6代に渡る経営者たちと105年の歳月を重ねて初めてショーメの名前が出てくるという非常に珍しい歴史を有している。

だがそれは決して悪い事ではない。その一族の血縁にこだわるのではなく、その時その時でもっとも適した人材が経営者として活躍する。技術が問われれば優れた技術を有する者が選び出され、経営力が問われれば優れた判断の出来る者が選び出される。そうすることによりショーメはより強く、より美しく、そしてより大きな存在へと進化してきたのだと思う。

ショーメのスタイルは、創業当時は富と権力の象徴として大きく力強く高貴なものが多かった。だが次の世代からは、ありのままの自然の美しさの表現が特徴的なロマンティックスタイルへと移り変わっていく。ジョゼフ・ショーメの代になると自然の素材の美しさとアーティストの感性を重視するスタイルを取り入れ、独創的な作品を多数発表し現代のジュエリーの基を築いていった。また、ジョゼフ・ショーメの時代から上流社会のシンボルとして流行したエグレットとティアラの制作に力を入れはじめ、ショーメの伝統としていくのであった。

1907年には現在でのショーメサロンが置かれているヴァンドーム広場12番地に移転する。

この頃からショーメの名声はヨーロッパだけでなく世界中に向けて広がっていく。

その皮切りとなったのは1900年に開催されたパリの万国博覧会である。

この博覧会でグランプリを受賞したショーメは、そこから数多くの国際博覧会に展示して、数々のグランプリを受賞するなど輝かしい実績を重ねる。また輸送手段の発達とともに顧客を世界中に拡大する。インドの貴族たちもその顧客に名を連ね、マハラジャも豪華な宝飾品をオーダーする顧客の一人であった。

多くの王侯貴族や富裕層を相手にティアラやブローチなどの正統派なジュエリーをつくり続けていたショーメ。ジョゼフ・ショーメの息子であるマルセル・ショーメの時代になると、当時流行のアール・デコ様式の幾何学模様をモチーフにしたデザインを数多く制作。その顧客にインドの王子たちやアメリカの富豪、映画俳優などを加えていった。

1977年には待望のアイコンアイテムであるリアン・ドゥ・ショーメが登場する。17世紀にヨーロッパで流行した愛の結び目を意味するラック・ダムというデザインをモチーフにしたこのシリーズはショーメを代表するデザインとして多くの人に認識されるようになった。

ショーメはトップクラスの高級ジュエラーであることに疑いはないが、イメージが沸かない。顔がない。そんな時代の終焉であった。

 

その後の歩み


1999年にはLVMHグループに買収され、その傘下に入ることになる。

大資本の傘下に入る際は往年のファンから特色が失われるのではないかという不安の声が上がるものである。だがショーメはその時代ごとに最適な選択をしてきた。創業者一族の手を離れても、次期経営者一族の手を離れてもショーメらしさは失わず、より美しくより繊細に、そしてより力強くその存在を高めていった。事実LVMHの傘下に入っても作品の良さ、ショーメらしさは全く失われていない。むしろ評価は上がるばかりである。

2010年に登場した新たなアイコンアイテムであるジョゼフィーヌコレクションは、ショーメの伝統であるティアラをモチーフにした作品であり、皇后ジョゼフィーヌに捧げるオマージュである。重厚感と繊細さが合いまったこちらのデザインは、ショーメらしさを見事に体現しつつも新しさを感じさせるコレクションであり、非常に高い評価を得ている。また翌2011年に登場したビーマイラブコレクションは皇后ジョゼフィーヌの植物に対する情熱を表現したとされている。こちらのコレクションも伝統を重んじながらも非常に高いデザイン性と多彩なアレンジに対応できる汎用性を兼ね備えている。

2020年には創業240年を記念し、ヴァンドーム広場にある本店のリニューアルオープンをした。これは伝統と格式を重んじながらも革新を取り入れていくというショーメの新たなる第一歩となるだろう。

世界各国の上流階級の顧客に、婚礼用など3500以上のティアラを作成してきたといわれるショーメ。その功績から『永遠の愛と絆の象徴』とさえ呼ばれている。

非常に優れた審美眼を有する王侯貴族を相手に、200年以上にもわたる歴史を積み重ねた実績は疑いようのない事実である。その高い品質とクオリティは今でも失われることなくさらに輝きを増している。そのショーメが現代に放つコレクションは間違いなく至高の輝きを放っているだろう。過去の栄光にとらわれることなく、日々研ぎ澄まされ進化していくショーメの感性にこれからも期待せずにはいられない。今後はどのような伝統と革新の融合を見せてくれるのか?次にショーメの出す最適な答えに期待したいと思う。

 

 

(編集:山﨑)

投稿者プロフィール

OKURA販促企画課
2019年にゲオグループ入りした株式会社おお蔵ホールディングスの子会社で、首都圏を中心にブランド品、時計、ジュエリー、貴金属のリユース買取、販売を行っています。
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